平成28年度 遠隔地巡回研修会


平成28年度の遠隔地研修会は日本財団の助成を受け予定通り終了しました


平成28年度 遠隔地巡回研修会の実施報告

 

平成28年度「遠隔地食道発声巡回研修会」は事業計画通り岐阜県岐阜睦声会・北海道北鈴会・福岡県福岡筑声会の3団体に於いて開催する事が出来ました。本年も事業に要する総費用の8割は「日本財団」様から社会貢献度の高い事業として助成を受けております。
日本財団様からの支援は平成19年度から連続して今年で10年目を迎えました。この研修会は各喉摘会の枠を超えた食道発声の普及活動として日喉連の中で定着したのも財団様のお蔭とこの紙面を借りて感謝しお礼を申し上げます。
最近は喉頭全摘の手術を受ける患者さんが減少しているのは大変喜ばしいことです。背景には喫煙者の減少、地域医療が取組む喉頭がん検査の充実、医学の進歩で温存手術等が有ると言われております。しかし、喉頭摘出の手術を受ける方も居られます、その方々に先輩の無喉頭者が代用音声の修得指導を始め日常生活の質を向上させ早期社会復帰のお手伝いをボランティア活動で支えている日喉連加盟団体の存在は、同じ障害者団体の中でも稀有な存在であり同時に大変感謝されています。今後も医療技術が如何に進歩しても新たな無喉頭者が誕生する限りは希望の灯りを常に灯し続けたいと願っています。
さて、今回の研修会では、食道発声の困難者やEL発声者が食道発声法にチャレンジされる方々が参加されました。食道発声の困難者には原音が出ない方、出ても不安定な方、クセや誤発声の矯正が上手くできないと諦めておられる方々です。また、EL発声者は、病院でEL指導を受けた方、入会時に早く職場復帰を目指した方、高齢なので食道発声を諦めEL発声法を身に着けた方、中にはとっさに会話が出来るからと理由は様々ですが、特別な器具等が不要な食道発声法を習得したい方々です。食道発声法とEL発声法の根本的な違いは、食道に空気を入れるか否かで、頭は理解していますがEL発声法に慣れた体は無意識に空気を取り入れず音、すなわち原音が出ないのです。
しかし、お茶のみ法等の原音発声練習を繰り返すことで、少しずつ空気が入り始めると声も小さいながらで始めます、後は練習を重ねることで少しずつ食道発声に慣れ声もでるようになります。こうなれば体は食道に空気を入れ口に戻し発声するリズムを覚えてくれます。とにかく根気よく練習を続けましょう。


各地の報告


岐阜県岐阜睦声会


1.派遣講師 秋元洋一・白川充彦・矢代三江
2.開催時期 平成28年10月25日から28日
3.開催場所 岐阜市「ふれあい福寿会館」
       高山市「同市役所内会議室」
4.参加者  野倉武彦会長 他延受講34名
5.総評
睦声会の研修会場は発声教室の岐阜と高山の2会場で開催致しました。研修日程は通常3日間コースですが今回は内1日は移動日に使いますので、1日の研修プログラムを作成しています。
1日研修のプログラムは、最初に喉摘手術と体の変化、食道発声法の発声要点等を参加者全員の情報をして共有できる時間を設けました。その後、個々人の発声力を確認し発声力クラスを分けて、改善が必要な方には改善理由と改善案を説明し練習して頂きました。指導効果が早くでたのは、発声時「手の動作」を伴うことで体が覚える事、再建者は発声が安定するまでは「頸部の抑え」を忘れないこの二つでした。二会場とも、大変熱心に取組んで貰い全員確認し研修を終了しました。

 

□「岐阜睦声会研修開催報告とその後」


平成28年10月26日岐阜市ふれあい福寿会館で10月28日は高山市の市庁舎の二会場において開催された遠隔地食道発声巡回研修会には、延べ34名が参加し両会場共終日熱心に研修会が行われました。
その内容は喉摘者に関する医学的な基礎知識や食道発声の基本的な原理など食道発声の基盤となる講義から始まり個別指導へと移って行きました。個別指導で特筆すべきは練習環境の設定でした。
全体を4つのグループに分けてテーブルを□の型に配置した中に講師が入り、その外側に受講者が講師を取り囲むように座ると言うものだった。この配置によって受講者個々の課題と共に課題解決に向けた練習方法を習得するだけでは無く、他の人の練習方法を知る事は自分の練習の参考になるだけで無く、睦声会での今後の個別に対応する指導方法を習得する事にも繋がる大変有意義な研修会でした。
研修会後の岐阜・高山両教室では始めて研修会で指導を受けた新人会員、前から食道発声習得中の会員及び指導員も今回の研修会で講師の先生方に色々指導を受け、各自何かを得たのか教室内の雰囲気もピリリとなり、教える方も習う方も今まで以上に真剣な態度で練習に励む様になりました。その為か研修会で始めて声が出た新入会員も今で2音3音と言う言葉が話せる様になり、その他の会員も確実に進歩しており、研修会の成果が出ております。
最後に今回の日本財団助成事業遠隔地食道発声巡回研修会を銀鈴会様のおかげで開催出来ました事を岐阜睦声会一同心より感謝し有難うございました。

岐阜睦声会 会長  野倉武彦

 


北海道北鈴会


 

1.派遣講師 秋元洋一・鈴木裕司・大場千恵子
2.開催時期 平成28年11月27日から30日
3.開催場所 札幌市保養センター会議室
4.参加者  松永雅晴会長 他延受講者89名
5.総評
北鈴会は道内を9支部に分け発声教室を開催して居られます。また、毎年1回は指導に当たる発声訓練士を一堂に集め指導情報等を伝える研修会を開催しています。今回の研修会では、食道発声の指導情報を共有する事と発声困難者2名が研修会に参加され銀鈴会の指導方法を体験して頂いた後、現地指導員との質疑を通して指導情報を共有化しました。  
現在、北鈴会の入会者は最初にEL発声法の指導を受けています。EL指導を優先する理由は冬季の間は発声教室までの交通網が確保されず教室での継続した練習が期待出来ないこと、EL指導でコミュニケーション力を早期に身に付けて欲しいとの事です。
その後、食道発声法の希望者に対しては、指導をしているが中々上達は難しく困っているとの話です。
今回の研修で食道発声を受講希望した2名の発声訓練士はお茶のみ法で原音発声が出来たので毎日欠かさず練習します、食道発声を希望する理由は生活の質の向上を目指していると話してくれました。

 

□「遠隔地巡回研修会を引受けて」


最初に、この度の研修会に助成して頂いた日本財団様と多忙にも関わらず3名の講師の皆さんを派遣して下さった銀鈴会に対し心から感謝申し上げます。
また、派遣された3名の指導員の講義も解り易く的を得た話でしたので全道各地からそれぞれの予定を調整し参加した30名の指導員も十分理解でき有意義な研修会だったと思います。今後は各自の教室に学んだ成果を持ち帰り発声指導に活用して頂けるものと期待している所です。
ご承知の通り、北鈴会は北海道の広大な地域に9支部散在し、会員登録者は約290名弱、指導員数は約40名を擁しています。
年に1度ですが北鈴会主催の指導員研修会を1泊2日の日程で札幌市内にて開催していますが、事務連絡、指導員の心得、往復の移動時間などでタイムオーバーに成ってしまい各支部における指導内容の細部まで、なかなか辿り着けない状況です。
この度の遠隔地研修会の2日目に初心者2名の(原音がやっと出る方)実演指導を銀鈴会の指導員にお願いしました所、当会の指導員の面々も銀鈴会の指導法に大変興味を示してくれました。
それを見ていた電気発声専門の指導員が(食道発声は出来ない方)私も食道発声をやってみたいと飛び入りで銀鈴会の指導を受ける場面もあり、当初予定していた実演指導の時間を2倍近くオーバーしてしまいましたが嬉しい誤算です。
困難なものに果敢に取り組んで行くチャレンジ精神を目の当たりにした周りの指導員の方々にもきっと何かが伝わった事と思います。まさに今回の遠隔地巡回研修会の大きな成果ではないでしょうか。
遠隔地の会員、指導員に夢や希望を与えて下さった事に対して改めてお礼と感謝を申し上げたいと思います。有難う御座いました。


北鈴会 理事 事務局長 土田勝則

 

 


福岡県福岡筑声会


1.派遣講師 川村二三男・木村 孝・篠田乃武子
2.開催時期 平成28年11月28日から12月1日
3.開催場所 北九州ガンセンター病院内
4.参加者  間村恭義会長 他延受講46名
5.総評
今回の研修会には筑声会を中心に佐賀喉友会、北九州創声会、福大病院喉笛会等の近県喉摘会も参加され開催されました。
研修会場は筑声会の発声教室が使用出来、音響や映像関係の設備が整っており研修がスムーズに進められました。
間村会長から九州の喉摘会は入会するとEL発声から指導を始めているとの事で戸惑いました。参加された方々全員がEL発声者です、しかし、「お茶飲み法」から指導を始めたところ、原音発声に成功し順調に食道発声へ移行できました。
 

□「遠隔地巡回研修会の開催報告」


今回の研修会の開催で一番頭を悩ませたのは、会場の選定でした。種々検討した結果講師の方々と、遠方の会員の宿泊と、研修会会場を分離することで解決しました。宿泊所は、ビジネスホテルにして、会場は、九州がんセンター様より無償で提供されている筑声会専用の発声教室としました。会員が通いなれた場所であること、マイク設備や教室備品が完備されていること、駐車場が無料で利用出来る等の利点を考慮して決定しました。
今回の研修会では、受講者を、EL発声から食道発声に変えたいと希望する人、食道発声初心者の人を優先的に参加して頂きました。
また、中級・上級者には、銀鈴会の指導法を学ぶ目的で参加して頂きました。
研修会後、EL発声者3名が食道発声に転向され、現在では、自分の名前が言えるほどになっています。中級・上級者の中からも、今年の研修会に参加した後に「発声訓練士」認定申請が可能な方が2名育っています。
これも、銀鈴会講師の方の熱心なご指導の賜物と感謝しています。また、この機会に、筑声会幹部として、後輩の指導に当たる方々に、「オリエンテーション」の進め方についての勉強会の時間を考慮して頂き有難うございました。
今回の研修会にご支援頂きました日本財団様銀鈴会様に会員共々感謝申し上げます。有難うございました。


   福岡筑声会 会長 間村恭義

 

<文責 秋元洋一>