令和元年度 食道発声法等の代替音声巡回指導研修会


令和元年度代替音声巡回指導研修会は日本財団の助成を受け予定通り終了しました。


令和元年度代替音声巡回研修会の実施報告
令和元年度「代替音声巡回研修会」は全て計画通りに開催出来ました。また、日本財団様からこの研修会事業は「社会福祉に関する事業」と評価頂き、事業費8割について助成を受けております。紙面をお借りし、お礼申しあげます。有難うございました。
 この代替音声巡回研修会は、日本喉摘者団体連合会(以下 日喉連)加盟の団体より講師派遣要請を受け毎年3カ所の喉摘会に赴き3日間の短期集中研修会を開催しています。
主な研修内容は、開催団体の課題提案と日喉連が進める「全国共通標準指導法」を基本に立案されますが、概ね次の通りです。
1.  各種発声法の概要確認と発声力向上を目指す。
2.  最新医療情報や指導技術等を共有化し地域差を無くす。
3.  複数代替音声指導者を養成するために新たな音声発声法の基礎知識から勉強して頂く際の不安解消のお手伝いをする。
4.  シャント発声教室の現状確認とシャント発声教室の開催希望団体を支援する。
5.  術後の不安解消や日常生活等のQOLを向上させる医師派遣要請を受ける。


さて、今年度の研修会は、山形県発声教室山彦会・愛知県愛友会・群馬県群鈴会の3団体で開催致しました。

各会ともシャント発声教室を開催しています他、顧問の先生とも気軽に相談できる体制が整っており安心しましたが、各喉摘会共通の悩みは入会者減少と会員の高齢化です。ここ数年来喉頭摘出手術を受ける方が半減したと言われています。その表れか喉摘会の近隣病院では最近喉摘手術をしないと言われた会もあります。その会も近隣病院とは情報交換を欠かさず喉摘会の存在を知って頂く努力を重ねると話されていました。また、会員減少の一つに会員や家族の高齢化で発声教室迄の交通の足が奪われ自然退会される方が増加している所もありました。会員減少は会の運営に大きな影響を与えます。全国喉摘会に共通する悩みでもあります。
今年の研修会は代替音声発声法(4種)の中から笛式を除いた3種類の発声法の概要説明から始めました。また、個人指導の発声力向上時限では最初に食道・EL発声者の声を確認して、より良い発声法に繋がる勉強を実施出来ました。
食道発声法の受講者は、発声力向上を目指す方、EL発声の習得者で一度は諦めた食道発声に再挑戦されました。当初は原音が全く出ない方も最終日までには、原音獲得され2音以上の発声出来る方も出ました。 また、発声力向上を目指す方も受講前より滑らかに発声出来ると喜んで頂けました。食道発声練習には、「発声と手の動作」を常に連動させた練習を繰返して頂く事で、空気の取り入れと発声のリズムが自然と体に覚えて頂けた結果だと思います。
EL発声法では、高齢入会者がEL発声力を向上させたい方、食道発声者がEL発声の基礎から勉強し、食道発声が何らかの理由で出来ない不安に備えたい方が参加されました。 
EL発声でも大切なのは雑音を出さず、しっかりした明瞭度を上げる事が大切です。発声器を当てる場所と密着度が良ければ、雑音も減少し明瞭な発声が出来ます。この場所探しと押し付ける強さを試し最も明瞭度が高まる場所と強さを体に覚えて貰う事が大切です。また、より良いEL発声は、一気に長い話をしない、会話の切れ目に合わせ発声器ボタン操作を小まめにする事で相手に負担の少ない会話が出来る事を理解して頂きました。


各地の研修会報告は次の通りです


発声教室山彦会(山形県)



1.派遣講師 松山雅則・大貫榮二・矢代三江
2.開催時期 令和元年9月16日から19日
3.開催場所 山形県東根身体障害者保養所
4.参加者  山形県発声教室山彦会金子会長・宮城県立声会・秋田県秋笛会・福島県福声会の四団体の合計21名
5.総評
北日本ブロック東北地区初めての研修会開催に複数の喉摘会が山形の会場に集合されました。
EL発声者7名の内、3名が食道発声を希望され「お茶のみ法」から始め、3日後には「あ・た・ま」と一音ずつ発声出来るようになり、1名は「あ」の連続発声10回が出来、1名は自分の名前をゆっくりと発声され出席者から盛んな拍手を受けました。
食道発声法では手術前の時のように話したいとの思いが強く早口になり、語尾が消えてしまう、4音・5音を確り発声出来れば健常者と会話は充分成り立つとの説明をして、ゆっくり・ハッキリと話すように指導しました。


◇「代替音声巡回研修会開催して」
     発声教室山彦会 会長 金子孝一

 

令和元年9月16日から3日間、東根市の山形県身体障害者保養所「東紅苑」に於いて、銀鈴会による「代替音声巡回研修会」開催して頂きました。開催について、2,3年前から話は出ていましたが、会員人数が40数名しかいない、山彦会単独で開催は出来ないのが心配で、北日本ブロック会に相談した所、各県の会長さん方から、ご協力を頂き開催する事が出来ました。銀鈴会から、松山会長、大貫榮二指導員、矢代三江指導員、発声教室山彦会13名、立声会2名、秋笛会2名、福声会4名合計21名の参加により発声教室を開催する事が出来ました。松山会長挨拶の後、クラス分けスケジュールに基づいて、お茶のみ法~誤発声の聞き分け、クセの対策等細かく指導賜り有難うございました。私も指導員をしてから7年に成りますが、銀鈴会のお茶のみ法、食道発声教本、ビデオ等を基に指導して来ましたが、今回の堅守会を開催して気持ちを新たにして、訓練に取り組んで行きたいと思います。県内4ケ所の発声訓練運営に役立たさせて頂きます。本当に有難うございました。

 


愛友会(愛知県)



1.派遣講師 秋元洋一・齋藤康夫・篠清市
2.開催時期 令和元年11月24日から27日
3.開催場所 愛知県がんセンター
4.参加者  愛友会禅野会長含む28名と岐阜睦声会竹中会長含む4名の合計32名
5.総評
今回の研修に於いて、EL発声者7名とも食道発声に挑戦され1名を除き原音以上の発声力をかくとくされ、1名の会員は5音発声も出来ました。食道発声の基本、実演指導を見て貰い、どの段階でどの様な指導が良いのか理解して頂き会員によっても指導方法が違う事を理解して頂いた。注意すべき事はわかり易く具体的に行う事とを理解していただいた。全体的にレベルアップが見られ今後の指導員および会意のスキルアップを期待します。


◇「代替音声巡回研修会を開催して」
      愛友会 会長 禅野晶俊


令和元年11月25日から27日までの3日間、愛知県がんセンター教室に於いて、令和元年度食道発声法等の代替音声巡回研修会の機会頂き有難うございました。さて、研修会は秋元氏(銀鈴会副会長)、齊藤氏(常務理事)、篠氏(理事)3名の訓練士により行われました。真剣で活気があり、思いやりがあり、熱のこもった指導は声を失った人の心に響くものでした。訓練士自らが声を出し、何とか声を取り戻して頂こうと間を置いて何回も指導されていました。指導要綱等の教本を読んでいますが、見て言葉を発し、体で訴えることの大切さを感じながら、当会の日頃の発声教室に「喝」が入ったようです。私を含め訓練士の皆さんも反省する事が沢山あり勉強になったことと思います。出席された会員の皆さんは参加して良かった、勉強になりましたと「ありがとう、感謝の気持ちで一杯」大変喜んでいます。現在訓練士の皆さんは、会員さんの信頼を得るように良く声を出し、教える側として自覚し、初心に戻りつつ復習しながら真剣に頑張っています。会員の皆さんは、お互いに筆談などを交え話合い笑顔がすばらしく前向きな姿勢が目に付きます。今回の研修会を機に、電気喉頭から食道発声に変わられた方も早く自分の声を取り戻し、社会復帰される事を祈念してなりません。最後に、支援をいただきました日本財団様、講師を派遣していただいた(公社)銀鈴会の皆様方には、この紙面を借りて深く感謝申し上げます。今後ともご指導、ご鞭撻を賜りますよう、宜しくお願い致します。ありがとうございました。

 


郡鈴会(群馬県)


 

1.派遣講師 太田時夫・渡邊操・大場知恵子
2.開催時期 令和元年11月26日から29日
3.開催場所 ハーモニー高崎ケアセンター
4.参加者  郡鈴会齋藤会長含む15名
5.総評
群鈴会の方は話すことに積極的で皆さん良く声が出ています。けれどそのため悪い癖がついてしまい雑音がかなり耳につきました。
今回の研修では飲み込み音など不必要な音がどれほど耳障りかを意識してもらうことができました。今後は人に伝わる音を自分の耳ででもしっかり聞いて、急がず焦らず落ち着いた丁寧な発声を心がけてもらいたいと思います。なお食道再建者が多く、普段から頸部を手で押さえて発声する習慣がなかった。そのため押える部分の指導と抑えて発声する基本姿勢を学んでもらえた。


◇「代替音声巡回研修会を開催して」
      群鈴会  会長 齋藤久嘉


令和元年11月から3日間、ハーモニー高崎ケアセンターで盛大に行われました。大場先生には大変お世話になりました。

私自身、初めての経験で戸惑いもありましたが、参加者全員が大変参考になり“よかった”の言葉が多く、これからの発声教室の発展につながっていくような感じがします。初級クラス、中級以上のクラス別に個人面接で分けて始まり、今回は初級クラスが参加者の半分以上おりましたが、3日間の研修により、自信をもってスピーチを行えるようになり、ビックリしている次第です。
教え方の大切さをしみじみ感じており、群鈴会のこれからの指導に取り入れていきたいと思っております。講師の先生方の熱意には感心しているところあり、教え方が大変参考になったと群鈴会の全指導員が感銘しております。
少ない時間内でありながら会員の性格をとらえ、上手にきびしく、そして温かみのある言葉でしっかり教えて頂き、今までになかったことを経験できたと新人会員を含む全員が明日の希望につながるとうれしく皆さん言っておられました。結びになりましたが今後とも日本財団様、および銀鈴会のご指導を宜しくお願い致します。

 


<文責 秋元洋一>