平成30年度 食道発声法等の代替音声巡回指導研修会


平成30年度代替音声巡回研修会は日本財団の助成を受け予定通り終了しました。


平成30年度 代替音声巡回研修会の実施報告

 

平成30年度「代替音声巡回研修会」も事業計画通りに開催出来ました。この活動では日本喉摘者団体連合会(以下日喉連と略す)を構成する56団体の講師派遣要請を受け毎年三カ所の喉摘会に赴き3日間の短期集中型研修会を開催しています。
主な研修会の内容は次の通りです。


1、 会員の各種発声力の向上を支援する。
2、 指導員同士の医療情報や指導技術等の情報を共有化し地域差を無くす。
3、 指導員には食道発声、EL発声、シャント発声の何れか二つ以上を習得して貰い将来複数発声指導が可能な体制を目指

  す。
4、 シャント発声教室の開設を支援する、後遺症や体調不安等に対してQOLの向上を医師による支援や各喉摘会の課題解決

  等のお手伝いを実施する。


 一方、研修会開催の総事業費の8割を日本財団様から「社会福祉に関する事業」として評価頂き助成を受けております。
紙面をお借りしお礼申し上げます。有難うございました。
さて、今年度の代替音声巡回研修会は、山口県喉友会・長野県信鈴会・鹿児島県鶴鈴会の3団体にて開催する事が出来ました。


今回訪問した喉摘会の共通した悩みは、入会者の減少と会員の高齢化に伴い家族も高齢化すると発声教室迄の送迎が出来なくなり自然と退会者が増加している事です。
また、参加された会員さんは、食道発声法の研修では、原音獲得の困難者、上達のカンがつかめず発声力が向上できない方が居られました。中でもEL発声の習得者が食道発声法を諦めずに再チャレンジされる方々が増加していました。
食道発声で一番難しいのは原音の獲得です、何も無い状態から音を作るのですから忍耐強く諦めない努力を重ね、しっかり発声出来るまでは練習を繰返す事が大切です。
今回も徹底して手の動作を加えた「お茶のみ法」の原音発声練習を繰り返して貰いました。原音の一音「あ」等の発声が出来ると参加者には大きな自信となります。その後は「習うより慣れよ」の精神で根気よく練習を重ね言葉を増やす、食道に空気を入れ口に戻し発声するリズムを繰り返して貰い、徐々に体が空気の取り入れと発声のコツを覚えてくれます。
EL発声法では、病院のEL指導では上手く発声出来ない方、入会時に職場復帰を急ぎ我流で発声器を使っていた方、高齢なので取えずEL発声をされた方々が参加されました。EL発声で大切なのは、発声器を体の何処の部位に当てたら良いかの場所探しと押し付ける強さも色々試し最も雑音の無い良い状態の位置と強さを体に覚えて貰う事が大切です。一気に長い話はしないこと、会話の切れ目と発声器のボタン操作のリズムを合わせるのも大切です。


以下各地の報告です。


山口喉友会


1.派遣講師 秋元洋一・渡邊 操・篠田乃武子
2.開催時期 平成30年10月21日から24日
3.開催場所 宇部市総合福祉会館 講習室
4.参加者  西村武剛会長 他48名
5.総評
今回の代替音声は、食道発声法とEL発声法を主に研修会を開催致しました。参加者の中には、過去に食道発声練習をしたが発声出来ず諦めEL発声やシャント発声を習得した方。また、西村会長のご要望は食道再建者への指導成果が上がらない状態を解決したいとの話でした。

研修初日は三種類の代替音声発声法の理論説明と実践指導として、食道発声法は「お茶のみ法」による原音発声練習を体の動作を伴い実施した結果全員が原音発声に成功しました。

一方、EL発声法では発声器の正しい取扱い方や雑音の少ない場所探し等の基本を確認しました。

研修二日目以降は両発声法の個人指導と発声訓練士同士の情報交換等を行いました。


◇「代替音声巡回研修会を開催して」

                                 山口喉友会 会長 西村武剛


会場は宇部市総合福祉会館のご協力を得て3階の講習会室にて、10月22日から24日の3日間代替音声巡回研修会を開催致しました。
山口喉友会は県下4教室を開講しており、各教室医療機関の専門性を活かした発声訓練指導を進めています。最近は単純喉頭摘出者と移植による食道形成者とが大まかに分別出来ますが後者の方が増加の傾向にあります。前者はシャント発声、後者はシャント発声、食道発声、電気式人工発声器と発声方法は多義にわたりますが願う事は食道発声が自然体に近く習得したい希望を願っています。このような現状の中で食道発声を身につけう為には空気の取り入れ方をどのようにすればスムーズに空気が入ってくるのか、この課題の解決を理解したくご講師の先生にご指導を依頼しました。先ず、発声の基本であります腹式呼吸の仕方から始め其処で原音を発する腹式呼吸のコツを教えて頂きました。原音、母音の連続発声、安定した10回の連続発声が出来たら2音、3音と同じ言葉を繰り返し繰り返しで発声の道を創り上げていく事が肝要だと参加された皆さん学ばれた事と思います。参加されたある会員は直後の教室で今までとは全く声質が違った食道発声で述語が発せるようになり、今回の巡回研修会に出席した事が先生のご指導で食道発声のコツがつかめ良かったと感謝しておられました。また、ある会員は食道発声は無理と諦めていたが先生の個人指導で原音が母音が発声出来たと今後の活動に希望を見出されたようでした。
シャントの方も二刀流で食道発声を身につけようと励んでおられ、各教室の発声指導や会員の姿勢も活性化していくと思います。
意義深い巡回研修会を開催した事で当会も他県と同様進むべき道の羅針盤を得る事が出来ました。

日本財団様と公益財団法人銀鈴会の先生方に巡回研修会を通じて喉頭摘出後の早期社会復帰に生きがいを植え付けて下さる事に深<感謝と御礼申し上げます。本当にありがとうございました。参加者一同温かい寄り添うご指導に重ね重ねお礼申しあげます。お世話になりました。

 

 


鹿児島県鶴鈴会



1.派遣講師 齊藤康夫・栃木芙美子・篠 清市
2.開催時期 平成30年10月28日から31日
3.開催場所 鹿児島県社会福祉センター
4.参加者  井之上博範会長 他延受講者31名
5.総評
研修会に参加された会員さん達は、この機会に声を取り戻したいと、船便の少ない奄美大島や屋久島から、また県内の僻地から時間を掛けて参加されました。
初日から最終の3日目には全員が食道発声のコツを掴まれて、声の出ない方やEL発声の方は少しでも声が出るようになり、島や地域に戻られてから今後ますますの進歩が期待できると感じました。また、訓練士の方はこの研修でより自信をつけ、鶴鈴会会員の皆さんのために活躍されると思います。


◇「代替音声巡回研修会を開催して」
                                 鹿児島県鶴鈴会 井之上博範


平成30年度の研修会も無事に終わり有難うございました。銀鈴会の講師の方々が熱心であり、会員、指導員ともに大変参考になる研修会でした。遠隔地からの受講者が少なかったものの初級と上級チームに分かれて研修会は大変盛り上がりました。
私個人も、少々体調が悪い状態ながら皆さんと一緒に基本練習が出来たことで声の明瞭度が上がったようでした。
ここ数回の遠隔地研修会で最も成果の出た練習でした。次回の研修にはより多くの参加が期待できると思います。
遠隔地の会員さんにとってはELの研修が有効だと感じたので、今回の研修にはELの講習を取り入れました。鶴鈴会の会員の中にはすでにELを使いこなしている人もいるので、講師の方と一緒に実技の練習をし、有意義な時間を持つことが出来ました。また、口腔じ語・咽頭発声の説明、人口鼻の説明、そして銀鈴会や外国の喉摘者の現状などを聞かせて頂き有り難うございました。
 今後も継続して遠隔地の方々をフォローしていきたいと思いますので、他の島々からも参加者を増やせる計画を立て、事前の連絡を充実させたいと思っています。

今後とも日本財団様および銀鈴会のご支援をよろしくお願い致します。                   


長野県信鈴会


1.派遣講師 松山雅則・鈴木正子・大貫榮二
2.開催時期 平成30年11月6日から9日
3.開催場所 長野県松本市地本屋会議室
4.参加者  上條和男会長 他63名
5.総評
遠隔地なるが故の教室への参加するための公共交通機関、高齢化による送迎や会員減少問題と運営の厳しさを感じました。
今回の集中研修会参加者は、熱心に件数を受け基本である、食道に空気を入れての発声。早くならない、リズムを持って、語尾をハッキリとくどいくらい言って、練習をしてもらいました。また、練習により発声出来る喜び、健常者とのコミュニケーションが取れる事により、生活に張りが出てくる事を期待しますと激励して、来年の指導員研修会にお会いするのを楽しみにしていますと言って終了しました。


◇「代替音声巡回研修会を開催して」
                                    長野県信鈴会 上條和男


平成30年11月7日から3ケ間長野県松本市に於いて銀鈴会による代替音声巡回指導講習会を開催して頂きました
銀鈴会松山(日喉連会長、大貫、鈴木3名の訓練士により、充実した発声教室を開催する事ができました。
信鈴会からは訓練士12名、会員15名の参加が有り、松山銀鈴会会長から受講者のクラス分けに始まり、上級クラスの発声指導、また特に声の伝わり方には、色々ある、本人が思っている声が果たして、相手方に自分が感じているように伝わって居るだろうか。空気伝導、皮膚伝導、骨伝導のお話は新鮮で会話に於いて常に心しておきたい、訓練の大事な事を、新たに感じた次第です。
大貫訓練士は巡回教室全体の進行、日比進む訓練内容を統括し食道発声の訓練に於いては、まだ声の出ない人達に熱心に訓練をして頂き信鈴会とは違う熱意と新鮮さを味わう事が出来ました。鈴木訓練士はEL発声を担当して頂きました、雑音の少ない器械の使い方、肌との接し方、「間」の取り方を教えて頂きました。言葉で伝えること、会話の楽しさを得る為に、私達は常に訓練を続けて行かなければいけない。

今回の発声教室の熱意は県内6ケ所の各教室運営に多いに役立たせて頂きます。有難うございました。 

 

 

  
<文責 秋元洋一>