会長挨拶


公益社団法人銀鈴会会長 渡邊 操

 

日頃より公益社団法人銀鈴会の活動にご理解ご協力、ご支援をいただき暑く御礼を申し上げます。

 

2020年は、世界的パンデミックを引き起こした新型コロナウイルス感染症の影響が日本社会のあらゆる部分に及びました。非常事態の大変な状況に直面し続けてきました。その中で浮き彫りになったのは、社会的弱者にある方々の抱えていた問題がコロナ禍を通じてより鮮明となったと思います。

 

コロナ禍の代表的な対策が「三密の回避」です。私たちのような喉頭摘出者には、この対策は極めて大きな不安材料でした。発声訓練には対面指導が必要で、直接触れたりすることも必要なのですが、これができない。また、永久気管孔という空気取り入れも直接肺と繋がっていて、感染リスクは健常者より高いと思われます。そうした異常事態は銀鈴会も例外なく弱者として浮き彫りになりました。発声教室はやむなく休講措置が取られ、実質2学期のみの開催、定期総会は書面議決で行いましたが、恒例の声の祭典はもちろんスピーチ発表会、家族座談会などの活動は中止となりました。この影響は今年度も継続するものと思われ、第1学期も大幅な休講が余儀なくされました。

 

このような状況の中で、私たちは何をすべきでしょうか。悩んだ一つの答えは、パソコンやタブレット、スマートフォンを使ったオンライン訓練です。この試みは、教室が休講中に発声訓練ができない会員さんのために、まずは希望者からスタートしました。昨年から理事会や訓練士とのコミュニケーションにZOOMによる会議などを行って好感触を得てスタートすることに決めました。当面は入会間もない初心、初級クラスを中心に週1回行い、訓練に参加された会員の皆様には高評価を得るなど一定程度の効果が上がっています。離島からの入会者もあり、オンライン発声訓練は欠かせないツールとなってきているのは事実です。いろいろな課題もありますが、一つ一つクリアしながら、今後も力を入れていきたいと考えています。

 

しかし、我々喉摘者には高齢者が多く、オンラインに取り組むにはややハードルが高く感じられ、オンライン訓練に参加される会員は決して多くはありません。今後、予防ワクチンが接種されその効果によりコロナが収束に向かうかもしれませんが、コロナ前の日常に戻ることはありません。

 

デジタル庁の発足も間近であり、オンラインの取り組みは社会的な要請となっています。当会としても、積極的にオンライン化に取り組みオンライン環境やオンライン化への整備のための補助を行政にも働き掛けていきたいと考えています。

 

昨年は新型コロナ感染症の影響と思われますが、喉頭を摘出する患者の減少により当会を含めた喉頭摘出者団体への入会者が激減しました。喉頭摘出者団体の事業目的は、「喉頭摘出者により発声機能を喪失した者のために発声技術の指導及び社会復帰への支援」ですので、医療技術の進歩により喉摘者の減少は喜ばしいことと受け止める必要があります。一方、現状を見ると、喉頭摘出者は一定程度存在しながら当会の活動が十分に理解されていないという事実があります。

 

当会の活動がどれだけ声を失った喉頭摘出者に社会復帰などで勇気を与えているかを、今まで以上に目に見える情報発信が必要だと考えています。その一つとして日本理学療法士協会様の御支援をいただき、啓発広報用のパンフレットの改訂版を作ることになりました。このパンフレットを患者様はもちろん病院などの医療機関や医科大学、看護学校などに広く配布していく予定です。

 

何よりも大事なことは、会員の皆様方の健康です。私たちは声を失った身体障害者であり、まずは「健康を第一」に考え、すべての事業を行いたいと思います。そのうえで、銀鈴会の活動を通して一人でも多くの喉摘者が声を取り戻し社会復帰できるように、本年も発声訓練士ともども頑張ってまいります。会員の皆様、賛助会員の皆様の一層のご支援、ご協力をお願い申し上げます。