平成29年度 食道発声法等の代替音声巡回指導研修会


平成29年度代替音声巡回研修会は日本財団の助成を受け予定通り終了しました。


平成29年度 代替音声巡回研修会の実施報告

 

銀鈴会が実施する「遠隔地食道発声巡回研修会」も歴史を重ね本年で16年目を迎えます。この間、食道発声の習得を目指す全国喉摘会の指導員と共に、早朝から午後まで三日間の短期集中研修を開催、発声困難者の救済や多くの受講者の社会復帰をお手伝いして来ました。
また、この十年医療技術の進歩で多くの食道再建者が命を救われており、食道再建者への発声指導技術も向上させ、今日では単純喉摘者と遜色無い発声力が習得できる指導方法等の研究も成果が出ています。
今年も最近の喉摘手術を受けている方を考慮し次の様な変更を行い実施しました。


「主な変更内容」
1.食道発声法に加え、電動式人工喉頭発声法(以下ELと略します)とシャント発声法を加えた三種類の発声指導が出来る体制を整えました。これで各喉摘会からの要望に沿った研修会を開催致します。
☆変更背景は、最近の医学進歩等で高齢者の喉摘者が増加傾向にある、食道発声習得者でも高齢化に伴い発声力が低下する恐れもあるのでその対策として、EL発声法を習得頂き不安を解消して貰う。
また、シャント発声者への発声支援体制構築の取組を開始しました。


2.新たに後遺症ケアや体調不安の方へ適切なアドバイが出来る医師の派遣制度を導入しました。
☆喉頭摘出手術を受けた患者は全員が発声機能喪失者となり音声会話が出来ません。
その他、患者の手術範囲や身体組織へのダメージの程度は個人により異なり、術後の後遺症の発症種類、範囲や重さ等の悩みは千差万別にあります。


3.事業内容の変更に伴い呼称も「代替音声巡回研修会」に改めました。
これら新たな活動と喉摘者同士の扶助精神を柱に、早期の社会復帰のお手伝を今後も継続して行きます。
今年度もお陰様で総事業費用の8割を「日本財団」様から社会貢献度の高い事業と評価され助成を受ける事が出来ました、紙面を借りお礼申し上げます。有難うございました。


さて、今年度の代替音声巡回研修会は
栃木県喉摘会・三重喉友会・熊本県天草会の3団体にて開催する事が出来ました。
食道発声法の研修では、原音獲得困難の方、上達のカンがつかめず発声力が向上できない方。EL発声習得者が食道発声法にチャレンジされる方々も居られました。


食道発声で最も大切なのは原音獲得です、何も無い状態から音を作るのですから辛抱強く励まし、確り発声出来るまで練習を繰返す事が大切なのです。今回も徹底して「お茶のみ法」等の原音発声練習を繰り返して貰いました。この原音の一音「あ」の発声が出ると参加者に大きな自信を与えます。その後は少しずつ言葉を増やす練習と食道に空気を入れ口に戻し発声するリズムを繰り返すことで、段々と体が覚えてくれます。


EL発声法の研修では、病院でEL指導を受けたが上手く発声出来ない方、入会時に職場復帰を急ぎ我流で発声器を使っている方、高齢なので取敢えずEL発声をされている方々が参加されました。
EL発声の基本は、器械を体の何処の部位に当てたら良いかの場所探し、その押し付ける強さを理解する、会話の切れ目と発声器のボタン操作のリズム合わせが大切なポイントです。


シャント発声の研修は、全参加者にシャント発声の良い所と悪い所を理解して貰いました。今回は、発声指導対象者が参加されて居りませんでした。

 

各地の報告


栃木県喉摘会



1.派遣講師 太田時夫・斉藤康夫・大場知恵子
2.開催時期 平成29年10月4日から7日
3.開催場所 宇都宮市総合福祉センター
4.参加者  猪瀬友夫会長 他延受講者55名
5.総評
初級・中級クラスは基本練習をしっかりやる事が大切です、一部の方で早く会話をしたいために誤発声になっている人がいた。上級クラスの方で雑音や癖の有る方も、最終日までに改善できた。毎日の積み重ねで一日も早く言葉を取り戻して欲しいと願っている。


◇「代替音声巡回研修会を開催して」

 宇都宮市社会福祉協議会の協力を得て、宇都宮市総合福祉センター大会議室(120名収容)を利用する事となり、備品等も整い環境が良い所で開催することが出来ました。
研修会初日早々に発声力のチェックを受け、レベル別に分かれ個々に応じた指導が始まりました。
初心者クラスには食道再建者が多く、単純喉摘者よりも原音発声が難しく、発声指導に苦慮していましたが、銀鈴会講師の方々のマンツーマンでの集中的根気よい指導をして頂き、原音が出て、本人はもとより会員一同が喜び感激した所でした。
更に、誤発声(咽頭発声)癖、雑音の矯正の仕方について指導して頂き大きな財産になりました。また、上級クラス・指導員には腹式呼吸の徹底した練習、「オリエンテーション」の進め方、指導員としての心構え等を指導していただき、全員のレベルアップとなり笑顔で研修会を終了することが出来ました。
三日間の短期集中研修会でしたが、良い成果を得られて実りある研修会でありました。
熱意をもってご指導下さいました先生方に厚くお礼申し上げます。
最後に大きなご支援を頂きました日本財団様と(公社)銀鈴会様には、栃木県喉摘会一同心より感謝申し上げます。
有難うございました。

栃木県喉摘会 会長 猪瀬友夫

 


三重喉友会



1.派遣講師 秋元洋一・鈴木正子・大貫榮二
2.開催時期 平成29年11月28日から12月1日
3.開催場所 三重県総合文化センター
4.参加者  塚本明雄会長 他延受講者77名
5.総評
三重喉友会の発声教室は三重・伊勢・四日市・尾鷲の4教室です。悩みは、高齢化により家族の送迎が必要、公共交通機関網が不足し月1回の教室に行くのもご苦労されている。  
塚本会長からは食道発声法とEL発声法の発声力向上を重点に指導して欲しいとの要望を受けた研修プログラムでした。
食道発声法の指導では、初日の会員紹介で、黙って両手の人差し指を交差させ着席した入会6か月の方が、最終日に「有難う」と挨拶され一瞬の間を置き賞賛の拍手を受けていました。
EL発声法の指導は、最初に発声器の基本操作法から理解して貰いました。また、機器操作を見様見真似で使っていた方には、雑音の発声防止、聴き易い発声法が有る事をお伝え出来ました。個人指導は、各自の発声を聴いて改善方法を説明し上達したと喜ばれた。


◇「代替音声巡回研修会を開催して」
      
 三重県は地理的に南北に細長く、北は四日市市~南は尾鷲市まで四か所の教室を開いています。各教室は月に一回の開催で、二時間と短時間での訓練です、今回の受講は有意義なものになりました。 初級の方が対象で手術部位は喉頭、下咽頭、食道再建の方が参加され、三日間ゆっくりと各人に合わせて基本、医学的に基づいた訓練をして頂きました。各人に共通した悩みは原音発声の訓練を熱心に行っているが、なかなかその「ポイント」がつかめず苦労していましたが、三日間の訓練で効果が上がった方が多くおられ、研修会の受講前と比べて皆さん「自信とやる気が」出てきて練習態度も見違えるようになりました。
銀鈴会の講師の方が熱心に、根気強く指導して下さり、又受講者も真剣に身に着けようと熱心な気持ちがひしひしと伝わってきました。ここで学んだ経験を今後の発声訓練に生かして、教室に通っている会員が一日でも早く日常会話ができるように励みます。
会員からもこのような演習会を又是非開いて欲しいとの要望が有りますので機会があれば検討のほどお願い申しあげます。
三人の講師の方々、送り出していただいた銀鈴会様には三重喉友会一同心から感謝いたします。

今後ともご指導、ご鞭撻の程よろしくお願い申し上げます。有難うございました。

三重喉友会 会長 塚本明雄

 


熊本県天声会


 

1.派遣講師 松山雅則・篠 清市・篠田乃武子
2.開催時期 平成30年1月23日から26日
3.開催場所 熊本医大付属病院
4.参加者 沼田敏雄会長 他延受講者80名
5.総評
研修初日から日を追うごとに会員の努力が見られた。初日1音発声者が最終日には5音発声ができた。EL使用の方は、食道発声と両立に向け頑張って行きたいと自信を持たれた。舌癌の二人、ゆっくりであるが5音まで発声できた。今回の研修で自信が持てた人も多かった。


◇「代替音声巡回研修会実施報告」
     
 現在まで、それぞれの発声法で自由に練習しておりましたが、今回食道発声法の理論から始まり空気の取り込み法などを教わり、ちょっとしたコツの指導で全員音が出て食道発声への希望が生まれたようです。新入会員の食道発声の方々もスムーズに声出しが出来た事に、またシャント、ELの方々も音出しが出来て感動されて居られました。
2日、3日目となればかなりの声出しが出来て一つの言葉づくりが生まれて来ました。特に今回は舌癌の方が2名居られました。日頃ELで熱心に訓練されておられましたが、なかなか言葉として作れない悩みが有りましたが、器具の当て方指導で、言葉が作れ大変な喜びをされた笑顔が見えました。
研修最終日、ELの方、シャントの方々が今後食道発声の練習をやろう!と云う声が聞こえてきましたので、今後の楽しみとなりました。指導者の方からは食道、EL、シャントどの発声でも練習され社会復帰となれば最高と言う言葉にも安堵の声が聞こえました。研修会後の最初の発声教室日でした。全員で声出し法から始め、今後の発声法が楽しみとなりました。

有難うございました。   

    熊本県天声会 会長 沼田 敏雄          
                 
<文責 秋元洋一>